今回は、利得や電界強度が絡んだ式を紹介します。
この時、最大放射方向において距離\(d\)[m]離れた地点の電界強度\(E\)[V/m]は、次式で表される。
<絶対利得\(G_I\)のアンテナの場合>
$$E=\frac{\sqrt{30G_IP}}{d}[V/m]$$
<相対利得\(G_D\)のアンテナの場合>
$$E=\frac{7\sqrt{G_DP}}{d}[V/m]$$
電解強度とは「電波の強さ」のことです。
アンテナの利得についてでも紹介していますが、絶対利得は等方性アンテナを基準とした利得、相対利得は半波長ダイポールアンテナを基準とした利得でした。
利得が二種類あるので、電解強度を求める式も二種類あるということです。
これらの式に値を代入すれば、受信点での電解強度をそれぞれ求めることができます。
ただし、直接波(送信点から直接受信点に行く波)のみを考慮しており、大地で反射した波は考慮されていないことに注意してください。
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さて、ここからは上の関係式を使って、いくつか問題に触れてみましょう。
自由空間において、相対利得が6[dB]の指向性アンテナに25[W]の電力を供給した。
この時、最大放射方向で送信点からの距離が35[km]の受信点における電解強度を求めよ。
ただし電解強度\(E\)は、放射電力を\(P\)[W]、送信点から受信点までの距離を\(d\)[m]、アンテナの相対利得を\(G\)(真数)とすると、\(E=\Large\frac{7\sqrt{GP}}{d}\)[V/m]で表される。
また、\(log_{10}2=0.3\)とし、アンテナおよび給電系の損失は無いものとする。
このように、問題文には電解強度を求める式が書いてあることも多いので、うっかり式を忘れてしまった時に命拾いできます。
ただし注意点として、問題文の利得がデシベル表記なのに対し、与えられている相対利得は真数で表されています。
なのでこの式を使うには、まず利得の真数を求める必要があります。
電力の単位をデシベルにしてみようでもお話した通り、真数\(X\)のデシベル表記は\(10log_{10}X\)で表されるので、\(10log_{10}X=6\small[dB]\)が成り立ちます。
ここで、
\(6=2\times10\times0.3=2\times10log_{10}2\)
\(=10log_{10}2^2=10log_{10}4\)より、
\(10log_{10}X=10log_{10}4\)
∴ \(X=4\)
利得6[dB]の真数は4とわかったので、与えられた式にそれぞれ値を代入すると、
\(E=\Large\frac{7\times\sqrt{4\times25}}{35\times10^3}\)
\(=\Large\frac{7\times\sqrt{100}}{35\times10^3}\)
\(=\Large\frac{7\times10}{35\times10^3}\)\(=\)\(2.0\times10^{-3}\small[V/m]\)
めでたく電解強度を求めることができました!
この式を使えば、電解強度以外の値も求めることができます。
例えば下記のような問題です。
自由空間において、相対利得が6[dB]の指向性アンテナに25[W]の電力を供給して電波を放射した時、最大放射方向の受信点における電解強度が2.0[V/m]であった。
送受信点間の距離を求めよ。
ただし電解強度\(E\)は、放射電力を\(P\)[W]、送信点から受信点までの距離を\(d\)[m]、アンテナの相対利得を\(G\)(真数)とすると、\(E=\Large\frac{7\sqrt{GP}}{d}\)[V/m]で表される。
また、\(log_{10}2=0.3\)とし、アンテナおよび給電系の損失は無いものとする。
最初の問題とほとんど同じですが、求めるものが送受信点間の距離となっています。
特に難しく考える必要はなく、与えられた式を変形して代入すればOKです。
利得の真数については、さっきの問題と同じ「4」ですね。
\(E=\Large\frac{7\sqrt{GP}}{d}\)より、
\(d=\Large\frac{7\sqrt{GP}}{E}=\Large\frac{7\times\sqrt{4\times25}}{2.0}=\Large\frac{7\times10}{2.0}\)
\(=\)\(35\small[m]\)
一陸特の試験では選択肢から選ぶ形なので、落ち着いて計算していけば正答とずれることはないと思います。
この手の式は時々登場するので、是非頭に入れておいてください。