利得は、「評価したいアンテナと基準アンテナとで電界強度を同じにした場合の、それぞれの必要な電力の差」と定められており、アンテナの良し悪しを表す指標に使われます。
これについて、少し具体的に説明したいと思います。
基準となるアンテナが必要
仮に、試作したアンテナの利得を知りたい!という状況だとしましょう。
利得を知るには、他にひとつ基準となるアンテナが必要で、これには
⭕等方性アンテナ
⭕半波長ダイポールアンテナ
のいずれかが使われます。
※理由としては、両方ともシンプルな作りなので、得られた結果を色々なものに使いやすいからです。
アンテナの供給電力と電界強度に注目
上記の二つのアンテナのうち、今回は等方性アンテナ(全方向に満遍なく電波を放射するアンテナ)を選んだとしましょう。
まずはこのアンテナを自由空間に置いて、アンテナに電力\(P_0\)を供給します。
そうすると、アンテナから電波が放射されます。
この状態で、最大放射方向(一番強い電波が出る方向)において、アンテナから距離\(d\)だけ離れた地点の電界強度を測定し、これを\(E_0\)とします。
次に、利得を知りたいアンテナを自由空間に置いて、同じように電力を供給します。
等方性アンテナと同様、最大放射方向でアンテナから距離\(d\)だけ離れた地点の電界強度を測定するのですが、この時、電界強度が等方性アンテナと同じ\(E_0\)となるように、供給する電力の方を調整します。
調整後、電解強度が\(E_0\)になった時の供給電力が\(P\)だったとします。
この時、\(\Large\frac{P_0}{P}\)(デシベル表記だと\(10log_{10}\Large\frac{P_0}{P}\))が、「知りたいアンテナの利得」となります。
単位は、「電力の差」を表す「dB(デービー)」が使われます。
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ちなみに今更ですが、自由空間も等方性アンテナも、現実には存在しません。
これらは、アンテナや電波の振る舞いを決めるために設定された、架空のものです。
なので「アンテナを自由空間に置く」というのも、あくまでシミュレーション上の話なのでご承知おきください。
絶対利得と相対利得
ひとつ大切なことを挙げますと、今回等方性アンテナを基準として求めた利得は「絶対利得」と呼ばれます。
これがもし、半波長ダイポールアンテナを基準として同じように求めた場合、その利得は「相対利得」と呼ばれます。
絶対利得と相対利得の違いは、基準とするアンテナの違いなので、覚えておくようにしてください。
●相対利得・・・半波長ダイポールアンテナを基準とした場合の利得
なお、絶対利得と相対利得との間には次の関係式が成り立ちます。
これは、等方性アンテナを基準として半波長ダイポールアンテナの利得を求めると、2.15[dB]になるからです。
この式を使えば、例えばあるアンテナの相対利得が10[dB]だった場合、絶対利得は、「10+2.15=12.15[dB]」と計算するだけで求めることができます。
とても便利なのですが、絶対利得と相対利得を逆にしてしまいがちなので、実際の問題ではどちらが求められているかを落ち着いて確認するようにしてください。