無線関係の仕事をしていると必ず目にするdBm。
まずは、dBmそのものについて見ていきましょう。
何を基準にしているか
電力の単位をデシベルにしてみようでは、1mWを基準として、ワットからデシベルへの変換を行いました。
そして終盤で、「1Wを基準にすることもありますし、1μWを基準にすることもあります」と述べました。
勘の良い方は気付いているかもしれませんが、dBmのmは、1mWのmです。
同様に、1Wを基準にした場合はdBW、1μwを基準にした場合はdBμを単位として使います。
世の中には色んな無線機があり、大きな出力の無線機に対してはdBWを、小さな出力の無線機に対してはdBμを使う方が都合が良い場合もあるのです。
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そもそもなぜデシベル表記が使われるのか?ということですが、第一に少ない桁数で表すことができるからです。
例えば1Wと100kWを、それぞれ1mWを基準(0dBm)としたデシベル表記で表すと、
\(1\small[W]=1000\small[mW]=10\log_{10}1000\)
\(=10\log_{10}10^3=3×10\)
\(=30\small[dBm]\)
\(100\small[kW]=100000000\small[mW]\)
\(=10\log_{10}100000000\)
\(=10\log_{10}10^8=8×10\)
\(=80\small[dBm]\)
となります。
ここからわかるように、1WをそのままmWで表そうとすると4桁、1kWに至っては9桁にもなりますが、どちらもデシベルに変換するとたった2桁で表すことができるのです。
これは見やすいうえに、計算ミスを減らすことにも繋がります。
今はまだピンとこないかもしれませんが、実際に使うようになると、その便利さが実感できると思います。
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ちなみに、1mWが2mWになったからといって、デシベルもそのまま2倍になるわけではありません。
(そもそも1mW=0dBmとした場合、0に何をかけても0なので、単純に倍にならないことがわかると思います)
2mWをデシベルに変換すると、
\(10log_{10}2≒10×0.3=3\small[dBm]\)(\(log_{10}2≒0.3\)より)
というわけで、ミリワットが2倍になると、デシベルは3だけプラスされます。
他にも性質はあるのですが多くて紹介しきれないので、別記事でちょくちょく出していきたいと思います。
dBmとdBの違い
「dBmとdBって同じじゃないの?」という声をよく聞きますが、この二つは別物です。
何度も述べたとおり、dBmは1mWを基準とした電力の単位です。
一方dBは、「増幅率の単位」です。
言葉だけだと分かり辛いので、簡単な図にしてみました。
dBというのは、要は「変化分」です。混同しないようにしてくださいね。
例えばある無線機の出力を表す時に「出力が30dB」とは表現しません。
「出力が30dBm」と表現します。
逆に、出力20dBmの信号が増幅されて30dBmになった(10だけアップした)場合「増幅率は10dBm」とは表現しません。
「増幅率は10dB」と表現します。
無線屋さんによっては、dBmもdBも「デービー」と言う人がいるので、困ったものですが・・・(笑)
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あと大事なこととして、dBmが絡んだ足し算引き算では、次の3つのパターンを覚えておきましょう。
[dBm]+[dB]=[dBm]
[dBm]-[dB]=[dBm]
[dBm]-[dBm]=[dB]
例えば、
○電力10dBmの信号が増幅されて10dBアップした時、増幅後の信号は10[dBm]+10[dB]=20[dBm]となります。
○電力10dBmの信号が増幅されて20dBmとなった時、どのくらい増幅されたかといえば、20[dBm]-10[dBm]=10[dB]です。
唯一dBm同士は、単純な足し算だと正確な結果になりません。
例えば10[dBm]と10[dBm]を足したからといって、「20dBm(=100mW)」とはなりません。
dBmを単に足すだけでは間違った値となるので、注意してください。