パラボラアンテナの概要では、マイクロ波の通信に欠かせないパラボラアンテナについて紹介しました。
このアンテナは一次放射器が反射鏡の正面に設置されていることから、「センターパラボラアンテナ」とも呼ばれています。
しかし正面に設置されていることで、電波の進行が阻害されやすくなります。
このようなデメリットを改善するため、下図のような、反射鏡を放物面の中心からずらして配置した「オフセットパラボラアンテナ」が開発されました。
反射鏡自体、センターパラボラアンテナに比べてかなりコンパクトに作られています。
一次放射器には主に電磁ホーンアンテナが使われ、少し上側に傾けた状態で配置されています。
ここから発射された電波は、センターパラボラアンテナと同じく放物面で反射し、位相が揃った平面波として空間を進んでいきます。
ただ、センターパラボラアンテナと違って電波の通り道に障害物が無いので、電波が妨害されることがありません。
このアンテナは衛星放送受信用として一般家庭にも用いられているので、住宅街を歩くと高頻度で見かけます(笑)。
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まとめとして、センターパラボラアンテナ、オフセットパラボラアンテナ共通の特徴を下記に示します。
●回転放物面で電波が反射される
●アンテナからは位相の揃った「平面波」が放射される
これに加えて、オフセットパラボラアンテナには次のような特徴があります。
●電波の進路が妨害されない
●利得や指向性への影響が少ない
パラボラアンテナに関する問題
ここでは一陸特でも見るような問題に触れながら、パラボラアンテナの特徴について理解を深めていきましょう。
次の記述は、回転放物面を反射鏡に用いたパラボラアンテナについて述べたものである。
このうち正しいものはどれか。
1.アンテナの利得は、開口面の面積に反比例する。
2.アンテナから放射される電波は、ほぼ球面波である。
3.一次放射器は、反射鏡の焦点に設置する。
4.一次放射器には、通常、電磁ホーンアンテナ等が用いられる。
5.反射鏡には、風の抵抗を受けにくくするために金網や金属格子が用いられることもある。
選択肢を順番に見ていきましょう。
1.パラボラアンテナの利得\(G\)は、反射鏡の開口面積\(A\)と使用する電波の波長\(λ\)、開口効率\(η\)を用いて、\(G=\frac{4πA}{λ^2}η\) と表されます。
この式から、\(A\)が大きくなると\(G\)も大きくなることがわかります。
よって、1は誤りです。
2.パラボラアンテナから放射される電波は、位相の揃った「平面波」でした。よって、2は誤りです。
3.その通りです。一次放射器を反射鏡の焦点に設置することで、反射したそれぞれの電波は位相が揃うのでした。
4.その通りです。電磁ホーンによる一次放射器は、パラボラアンテナの構造上なくてはならないものです。
5.その通りです。パラボラアンテナの反射鏡に用いられるのは、通常、金属板です。
しかし風が強い地域では、反射板の隙間から風を逃がして抵抗を受けにくくする目的で、金網や金属格子が使われることもあります。
以上より、正しい選択肢は3、4、5となります。
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パラボラアンテナに関しては、利得や開口効率を求める計算問題もありますが、ほとんどは知識問題です。
何度も繰り返し目を通して、頭に入れておいてください。