下の図は、同期検波による2相PSK(BPSK)波復調器の原理的構成図である。
図中のAおよびBに当てはまる正しい字句を答えよ。
同期検波は復調方法のひとつで、搬送波を持つ信号に対して使われます。
変調時に使った搬送波と全く同じ(位相と周波数が同じ)搬送波を用いることから、「同期」と呼ばれています。
また、PSKとはデジタル符号に応じて搬送波の位相を変える変調方式です。
このうち、搬送波が取る位相の状態が2種類だけ(\(0\)と\(π\)、あるいは\(\Large\frac{π}{2}\)と\(\Large\frac{3π}{2}\)など)の場合を、2相PSK(=BPSK)といいます。
このようにして変調された電波を受信した後、元の信号波(情報)を取り出すために、「復調器」で同期検波を行っているのです。
-----------------------------
変調されて空間を飛んできた電波は「変調波」といい、搬送波と信号波が混ざっています。
この変調波から信号波だけを取り出すには、初めに変調波と搬送波を掛け合わせる必要があります。
掛け合わせ用の搬送波を作るには、変調波を搬送波再生回路というものに入れます。
そうすると、変調時に使った搬送波と全く同じものが出てくるので、これと変調波を一緒に「乗算器」に入れます。
乗算器の中で変調波と搬送波を掛け合わせると、結果的に搬送波が取り除かれ、信号波のみが出てきます。
この信号波を、高調波成分を除くために「低域フィルタ(LPF:ある値より低い周波数だけ通すフィルタ)」に通し、その後識別器に入れてやります。
信号波は識別器の中でアナログからデジタル信号に変換され、元の状態で出力されます。
というわけで正解は、
A=搬送波再生回路
B=低域フィルタ(LPF)
となります。
問題では大抵「搬送波再生回路」と「低域フィルタ」の部分が空欄になっています。
もしその他の部分が空欄になっている場合、「乗算器」は二つの矢印がぶつかる点、「識別器」は構成図の最後の段に配置されている点を、それぞれ見分けるポイントとしてください。
-----------------------------
せっかくなので、同期検波に関する問題をもう1問。
次の記述は、デジタル無線通信における同期検波について述べたものである。
このうち正しいものを選べ
1.同期検波は、高域フィルタを使用する
2.同期検波は、受信した信号から作った基準搬送波を用いて検波を行う
3.乗算器は、受信したアナログ信号を処理し、デジタル信号として出力する
4.同期検波は、遅延検波よりも符号誤り率が劣っている
このように、同期検波の問題では文章の正誤を問う問題もあります。
やり方としては、正しいものをピンポイントで当てるか、間違っているものを消していくかの2通りです。
今回は間違っているものを消していきましょう。
1.同期検波に使われるのは、高域フィルタではなく「低域フィルタ」ですね。
3.受信したアナログ信号をデジタル信号として出力するのは、乗算器ではなく「識別器」です。
乗算器は、変調波と搬送波を掛け合わせるものでした。
4.新しい言葉が出てきました。「遅延検波」と「符号誤り率」です。
これは、結論から言うと間違いです。符号誤り率は、同期検波の方が優れています。
(「誤る」というのは、受信側で間違って判別してしまうということです。間違え過ぎるとデータの欠落に繋がりますが、正常な機器だと誤り率は非常に微々たるものなので、私達が実感することはありません)
というわけで1、3、4が間違いなので、消去法で2が正解となります。
念のため確認すると、
2.同期検波は、受信した信号から作った基準搬送波を用いて検波を行う
その通りです。同期検波を行う復調器には、変調波を入れる「搬送波再生回路」が組み込まれているのでした。
----------------------
一陸特では、同期検波は大抵穴埋めか、文章の正誤を当てる問題が出てきます。
いずれも知っているかどうかで正答できるので、何度も繰り返して頭の隅に入れておいてください。